「抜型(刃型)を作りたいけれど、CADデータやイラストレーターのデータがない…」
「手作業で描いた手書きのラフ図やイラストからでも、正確な抜型は作れるのだろうか?」
このようなお悩みを抱えているお客様は少なくありません。実は、抜型製作において「完全なデータ」が最初から揃っているケースばかりではないのです。今回は、金型・抜型メーカーの現場視点から、データがない状態からどのように型紙を起こし、材料の下準備を行っているのか、製造プロセスの「第1歩」をご紹介します。
1. どんなフォーマットからでも対応!型紙・データの受付と作成
お客様からいただく抜型の依頼データや資料は、実に様々です。弊社では、お客様のご都合や環境に合わせて柔軟に対応しております。
| 受領する資料・データ | 弊社の対応および特徴
|
|---|---|
| 原寸大の型紙 | 営業による直接受領や、郵便でお送りいただいた紙の型紙をそのままベースにして製作を進めます。 |
| CAD・Illustratorデータ | メール等でデータ(.dxf / .ai など)を送付いただき、精密な寸法データをそのまま型紙作成に反映します。 |
| 手書きのラフ図・ポンチ絵 | 寸法やイメージが記載された手書きのスケッチ(ポンチ絵)から、弊社側で正確な「型紙」を起稿・作成いたします。 |
「イラストや手書きの図面しかない」という段階でも全く問題ありません。熟練の職人が意図を読み解き、製品として成立する精度の高い型紙へと落とし込んでいきます。
2. 原材料の「コイル材」カットと反り(曲がり)の矯正
型紙が完成したら、次はいよいよ実際の刃物材料(スチール材)の切り出しに入ります。しかし、ここでも「単に切るだけ」ではない、職人のこだわりと下準備が存在します。
- ゆとりを持たせた外周カット(約+10%):
型紙の外周寸法を測定し、実際の必要長さに「約+10%」の余裕(マージン)を持たせて材料をカットします。この余長が、後の繊細な曲げ加工や擦り合わせ(端面合わせ)の精度を支える重要なポイントになります。 - ローラー通しによる「反り直し」:
抜型の原材料は、保管や運搬の都合上、円筒状に巻かれた「コイル材」として管理されています。そのため、コイルから引き出してカットした直後の材料は、どうしても丸く湾曲した「反り」の癖がついています。これをそのまま曲げ加工に回してしまうと、出来上がりの寸法精度に狂いが生じてしまいます。
そこで弊社では、カットした材料を一度専用のローラーに通し、真っ直ぐな状態へと癖を伸ばす矯正作業を徹底しています。目立たない工程ですが、この「まっすぐな状態に戻す」一手間こそが、後のミリ単位の曲げ精度を実現するための絶対条件なのです。
まとめ:見えない下準備こそが「高精度な抜型」を生み出す
抜型づくりは、刃を曲げる前の「データづくり」と「材料の調整」からすでに始まっています。
図面がない状態からでもお客様のご要望を形にし、巻き癖のある材料をひとつひとつ真っ直ぐに伸ばして準備する——。こうした地道な職人の技術とこだわりが、最終的な抜型の精度と耐久性を左右します。
次回は、抜型製作の醍醐味である「職人の手技による刃曲げ加工と、型の歪みを防ぐ補強サン(補強桟)の秘密」について詳しく解説いたします。
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